1年ぶりの小林・上田Duoを聴く 2017.4.15. 東京 白寿ホール

2016年6月に同じホールで聴いた小林美恵・上田晴子の室内楽の感激は深かったが、1年後の2017.4.15.に再び至福の時を

味わいました。

 

今回は小品ばかりを集めたプログラミング。

・ クライスラー: ウィーン奇想曲 Op.2.

・ クライスラー: ラ・ジターナ

・ ファリャ:(クライスラー編曲)スペイン舞曲 第1番  などなど。 

 

 会場の誰もが1度や2度は聴いたことがある、と応えそうな、ポピラリティーのある曲が並ぶ。

 

Beethovenのソナタ、や Ravel のソナタが並んだ2016年と、かなり趣向の違った打ち出しである。  切符は完売し、

会場に空席はない。 まずは順当な滑り出し・・と思って聴いていたのだが、段々、二人の術中にこちらが囲い込まれて行く

という気分になって来る。 サン・サーンス のハバネラ の切れのいいリズム。二人が本当に楽しそう。 あぁ、と、初めて

上田晴子とブルーノ・パスキエ(Vla)の圧倒的なDuoを聴いた、20数年前の至福を思い出していた。二人は舞台の上で、無心に

“遊んで”いるかのようだった。二人にだけ見えるボールを投げかけては、キヤッと叫んで受け止めているかのように。「こんな球、どぉお?」「おやおや、そんな風に来るのかい」「ほら、こっちからこういうのもいいでしょ?」

そうかぁ・・合奏ってのは、こんなに楽しく心弾むものなんだなぁ。決して一人では出来ない、音楽の愉しみ。初めてであった頃から考えると、上田さんの音楽は、どんどん進化している。毎回、音楽会の度に何かが新しいのだ。

 

今回は、(元々そうだったのだけれども)本当にこの人の音は美しい、と心の底からため息をついてしまった。

私は常々、一緒に勉強に来てくれる若い人に云い、云いしている。「音楽の持つ美質の中で、最も尊いのは音色と、歌い振りだ」と。

上田晴子という音楽家を追っかけて、およそ20数年が経った。この人の、この2つの角度からの魅力は本当に進化を止めない。

他にも様々な魅力を振り撒いて、われわれファンを魅了してくれる人なのだが、今回、殊にこの2点に酔い痴れさせてもらった。

 

シマノフスキーの「夜想曲とタランテラ」が始った途端、ピアノの低音の響きは、あれは、一体・・・全身を耳にして、その

「甘露」を味わい尽くそうと彼女の音の世界へ一緒に降りて行く。「演奏を聴く」「音楽を共有する」というのは、こんなに

素敵な事だったんだ、と。

 

小林美恵さんの進化振りにも舌を巻いた。 元々、絶妙に”うまい人”なんだが、今回はその音の美しさに加えて「うたう」ことの

深さと快感に酔った。「作品を隈なく歌い尽す」という言葉が、聴きながら心に浮かんだ。

 

ファンの幸せ、を深く思い出させてもらった午後でした。