「和声法」と楽曲分析は どうつながるのか。

 去年の今頃、信じられない程の酷暑の中で、ウンウン云いながら書いた新しい和声の本が、

間もなく書店に並ぶだろうと思います。

詳細はまだここには書けませんけれど、我ながらなかなかよく書けている、と校正をしながら

ニンマリしています。しかし、これには編集者の腕前が大きくかかわっています。

その「影の立役者」に、本当に感謝。

 

 その中でも書いているのですが。

 

そもそも、「和声法」が人々に嫌われた大きな理由は、「このなかなかに厄介なもの、

唯々、ルールを並べただけに思える本を頑張って読み、課題を解く苦労は、一体何の役に立つ

んだろう」と云うのが、とても沢山の学習者の偽らざる感想であろうと思うのです。

 

音楽をよく理解するために、どうしても要るんだよ、と先生に云われて。あるいは入って

しまった音楽大学という「檻の中で」やらないという選択肢はなかったから勉強してます、

という学生さんにとって。「そこんとこのつながり具合を解らせてよ!」という想いは

つよいと思うの。

 

さて、今日の朝。頃はお盆に差し掛かる酷暑の中を、一人の弟子が「先生、ヴァルトシュタイン

の1楽章の分析を教えて下さい」とやって来ました。 Beethoven が1802〜3年に書いた

ピアノ・ソナタの傑作です。

 私にはとても嬉しい注文。そう、私はピアノ学習者が、自分の弾いている曲に、曲の本質に

ほとんど興味を持たずして、唯“Task・しごと”のように弾くのを、哀しく思って来ました。

この女性は、私と和声法の勉強をし始めて4年程。「さらい方勉強会」にも参加して1〜2年に

なります。

「さらい方勉強会」とは、まずは自分が弾いている曲が何を訴えようとしているのか、どんな

感情を聴き手に伝えたがっているのかに目を向けよう。それが解れば、どういう手順で練習

すれがいいか、さらい方(練習の仕方)が見えてくるだろ?という会なのですが。

 

突然の電話で、「個人レツスンして下さい」と。

 

 この曲は弾く技術としても難易度は高い。それだけに、ピアノ椅子に座る前にしておかねば

ならないことがいっぱいあるのです。

 

 Beethovenの人生の、どんな時期に書かれたのか。(57歳で死んだ彼の、32〜3歳の作品)

◆ヾつの楽章があるのか。各楽章に与えられた表情記号は? 調性・拍子・それぞれの小節数

  を列挙しておく・・・  これは全体の演奏プランに大きな参考になります。

 まずは1楽章です。主題はどんな形をしているかな?どこまでが一塊? 調はどんなふうに

  移ろうているかな?

ぁ〃措阿浪拭 一番可能性か高いソナタ形式を疑ってかかるんだが、だとしたら、第2主題は

  どこにある?

ざっと挙げただけでも、この位はある。そしていよいよ、曲の詳しい観察に取り掛かるのです。

 

 この時、和声法の力がモノをいう! あ〜、この主題は和音の交代がはっきりしているなぁ、

とか、う〜ん、ここの所はず〜〜っと、同じ和音が続いてるゾ。どうしてなのかなぁ。どう

弾かせたいのかしらん。このフシ、綺麗なメロディだなぁ、その時の和音交代の具合と、フシと

ベースラインの設定がなんて絶妙なんだろ、素敵。あ、転調してる!なんて具合に。 

こういう場面で、てきぱきと、自らの疑問に応えられるように下準備をしておくのが、「和声法

を学ぶ」の本当の目的なんです。

 

昨日の彼女は「ふ〜ん、私、随分見落としをしていましたねぇ。」とため息をもらしておりました。

でも、私、言ったんです。「私は嬉しい。あなたが和声法のクラス来てくれて、辞めないで頑張った

お蔭で、このなかなか複雑な曲を分析しないでは弾けないことに気がついてくれた。だからこうして

一緒に勉強出来たんだもの。」と。ホントにホント。

 

あなたも「好きな曲を知る旅」をしませんか? ご一緒に!

 

   2019.8.12. 土田京子